Apr.22.2022

/ 一生モノ

菜の花畑を走る蒸気機関車を見に、四川省楽山市の犍为に行く!

鉄道旅行好きですが、鉄オタではありません。全くの衝動。たまたま見た写真に目が釘付けになり、どうしても行きたくなり行ってきました。それは、四川省楽山市の犍为(チエンウェイ)にある芭石鉄路の写真です。咲き乱れる菜の花の中を白い煙を吐きながら走って来る蒸気機関車にしびれました。この写真の世界に自分も立ちたくて決めました。仕事やリフレッシュのために行く旅ではなく、「どうしても今、見たい」と言う衝動や直観に従えば、その旅は、きっと「一生モノの旅」になると思うのです。

私がしびれた四川省に今も残る『芭石鉄路』とは?

春の中国旅行と言えば、菜の花を見に行くツアーが人気です。中国の菜の花の名所は、雲南省の羅平など人気の場所が各地にあります。しかしその中で最もハードルが高いのが犍为でしょう。それは芭石鉄路のチケットを入手するのが非常に難しいからです。芭石鉄路は、1959年7月に嘉陽炭鉱が掘り出した石炭を運搬するために敷いた19.8キロの鉄道です。幅76.2センチのナローゲージの鉄道でもあり、「嘉陽小火車(鉄道)」とも呼ばれています。1980年代に鉱山が閉山された後も、芭石鉄路は沿線住人の唯一の交通手段として営業を続けました。これが注目されるようになったのは、沿線に残るノスタルジックな風景です。1970年代の社会主義を突き進む中国を思い起こす風景が、映画やドラマのロケ地に使われたのです。

沿線の住民。素朴な村の生活が見られる

芭石鉄路の風景は、写真撮影や鉄道好きの間では有名でしたが、一般には特に知られてはいませんでした。しかし今では四川省の春の人気観光地として有名になり、中国の国内ツアーも訪れるようになりました。以前は外国人旅行者でも簡単に買えた芭石鉄路のチケットですが、今では菜の花が咲く2月下旬から4月にかけては本当に入手困難です。1日4往復の鉄道もこの季節には増便されますが、それでもまったく足りません。しかも芭石鉄路は中国鉄路局が運営している鉄道ではないので、鉄道予約サイトでは扱っていません。外国人にはまったくもって入手困難なチケットなのです。

なんとかなるだろうととにかく現地にGO!

こんな蒸気機関車に接続した客車に乗ることができる

私が狙っていたのは、わずかに残っている(であろう)当日券です。いつもなら外国人旅行者は、犍为に近い楽山市に泊まるのが普通です。楽山市は世界遺産の楽山大仏がある観光都市なので、ホテルは数多くあります。楽山から犍为は日帰りが可能ですが、菜の花の季節だけはほぼ不可能。ここは余裕を持って、芭石鉄路の駅がある三井に泊まることにしました。

楽山を出発し、10時半ごろ三井に到着。バスを降りた場所から目についたチケットオフィスに猛ダッシュ! ホテル探しや記念撮影より芭石鉄路のチケットのゲットが最重要課題です。土日を外し金曜に行ったのも良かったのか、5,6人しか並んでいません。しかし、残っていたのは午後14時発と16時発のチケットのみ。14時発と15時30分発の戻り列車のチケットを押さえました。これで菜の花畑の中を進む蒸気機関車に私も乗れることになりました。

閉山された嘉陽炭鉱の設備がそのまま残っている

芭石鉄路に乗って、一面の菜の花の中へ

閉山された嘉陽炭鉱の設備がそのまま残っている

観光用列車の出発点になっているのは、三井の躍進駅です。名前からして鉄道開通当時の中国を表しています。午後2時発の観光列車ですが、大幅に遅れ午後3時過ぎに発車しました。線路沿いに周辺住民の生活道路がありそうですが、ありません。線路脇の狭い空間のみ。そこを時おりバイクが走って行きます。蜜蜂岩駅で約15分の停車と見学タイムです。駅は屋外博物館になっており、蒸気機関車が展示されていました。ここで方向転換し、いよいよ菜の花鉄道の始まりです。菜園壩駅の手前は大きく湾曲しています。私が感動した写真もこの場所です。大きく湾曲しているため、列車はゆっくりと黄色い海の中を進んで行きます。この後で「火車表演(演技)」と言う素敵なサービスがありました。菜園壩駅で乗客が降り、小高い丘の上に登っている間に蒸気機関車がバックします。乗客は、丘の上から菜の花畑の中を走って来る機関車の写真を撮ることができるのです。

菜の花シーズン中は、1日2本だけの普通列車。普段はここに鶏や豚が乗ることもある

その後は列車が大幅に遅れたため、終点の芭溝に到着するとすぐに引き返すことになり、芭溝に残るレトロな建物をほとんど見られませんでした。翌日は朝7時発の普通列車に乗り、もう一度、菜園壩駅に菜の花を見に行きました。この日は列車が1時間30分以上も遅れていました。菜園壩でもう一度、菜の花畑を走って来る蒸気機関車を見学。終点の芭溝までのチケットは放棄して、2時間かけて躍進駅まで歩きました。戻る途中、線路を歩く観光客の集団とすれ違いました。土曜日のせいか朝10時の時点でもう午後4時のチケットしかなかったので、歩いている人たちでした。

芭溝駅には、社会主義まっしぐらだった時代の中国がそのまま残っている

本当に綱渡りだった芭石鉄路の旅

チケットの入手が難しく、列車が遅れに遅れるなど、時間的にも精神的にもドキドキハラハラの旅行でした。「菜の花畑の中を走って来る蒸気機関車を見たい」と言う気持ちを最優先することに迷いがなかったので、私は2回も菜の花と蒸気機関車を見ることができ、菜の花の景色に心行くまで浸れました。

私が行った2017年に比べると、現在は芭石鉄路のチケットはさらに入手困難になっています。本当に行っておいて良かった。衝動に突き動かされ、エイヤッと旅に出れば、無我夢中で困難もなんとかクリアでき、結果的に「一生モノの旅」になるようになるのでは? なんて思っています。

 

[ アクセス ]

四川省成都より高速鉄道か成都の成都旅游バスセンターから高速バスで楽山へ。
楽山高速バスターミナルより犍为へは、高速バスで約1時間。到着した犍为のバスターミナル前で三井行きのバスに乗換え、約40分で三井に到着。楽山から犍为行きは午後6時ごろ終了。
犍为から三井行きは、午後7時20分頃終了。