Mar.31.2022

/ 一生モノ

作り手が想う一生モノとは 飛騨高山の木工職人 工房まめや 鈴木 修さん [一生モノの職人]

飛騨高山の木工職人 工房まめや 鈴木 修さん

1973年千葉県生まれ。高校卒業後、日本の五大家具産地の一つ、岐阜県高山市の工房で木工職人としてのキャリアをスタート。オリジナル家具から特注家具の製作、拭き漆仕上げまで、一人一品製作を行いながら修行の日々を過ごします。その後、飛騨の大手家具メーカー「株式会社シラカワ」で5年間の修行後、2006年「工房まめや」を設立。
・2006飛騨木の国デザイン展 家具・建具賞受賞

無垢家具を創り続ける鈴木さんに、一生モノの家具についてお話をお伺いしました。

無垢の家具との出会い

はじめに、修行をさせていただいた、岐阜県高山市の工房での修行が私の基礎となっています。
手道具を使う事に、とてもこだわった工房で、様々な木工の技術を一から修行させていただきました。一人一品製作でオリジナル家具から特注家具の製作、拭き漆仕上げまで行いました。

こちらの工房でお世話になった3年間は、木工のことのみを考えていた、とても充実した時間でした。本当の意味で、無垢の家具の魅力を知ったのもこの時期だったと思います。

日本の五大家具産地 飛騨家具

飛騨家具の歴史は、1300年前にさかのぼります。
飛騨国はその昔、薬師寺・法隆寺夢殿・東大寺など多くの神社仏閣の建立に関わり、平城京・平安京の都づくりに活躍しました。日本建築史の黄金時代の一翼を担ったといっても過言ではありません。
まじめで、伝統のある高い技術を誇った彼らは、「飛騨の匠」と賞賛されるようになります。

そんな「飛騨の匠」の意志を受け継ぎ、日本の豊かな自然と西洋の曲げ木の技術が融合した、「飛騨の家具」は誕生しました。曲げ木の高い技術に、無垢材(天然木)の風合いを活かした、美しく、何世代も使っていける丈夫なデザインが特徴です。

つくり手として考えている事 (鉋仕上げ)

私が家具を作る上で念頭に置いている事は、
「何世代にも渡って使ってもらえること」。

まず素材に関しては、基本的に良質の無垢材であれば時が経過して使い込んでいく程、深みのある色艶が出て、より魅力的になります。

この艶の出方に関しては、作った時の表面の仕上げ方で差が出るわけですが、一般的な仕上げ方法としては、サンドペーパーで細かく磨き上げます。ところが無垢材の表面は、人間と同じように小さな細胞が並んでいるので、細胞レベルで見ると、細かい傷は取りきれないんですね。

これを昔ながらの道具である鉋でスパッと切ると表面の傷は無くなります。
経年変化による艶の出方がより美しくなり、水などが染み込み難く、汚れにも強くなります。

また鉋で削った軌道も微妙に残すようにしてるのですが、こうする事で作った時の息吹きというか、作った時の温度感、”人”を感じる家具になればと思っています。

理由はわからないけど、「捨てられない家具」というものになれば最高ですね。

一生モノとは、どんなものだと思いますか?

「わかりにくいもの」
「一言で説明がつかないもの」

魅力のあるモノをどう作るかと考える時、魅力のある”人”と重ね合わせて考える事が多くて、魅力のある人って一言で説明できない要素を持っているというか、複雑でわかりにくくて深みを感じる人。

もちろん欠点もあるし、独特な特徴もある。
そんな人だと思うんですね。

そういうことが家具で表現できたらと思っています。

すっと付き合っていく一生モノという意味では、結婚生活と似ているというか(笑)
すべてが説明できて、完璧な人とずっと一緒にいると疲れるじゃないですか。
説明できないけど、なんか良い。
そんなモノがずっと付き合っていける一生モノになる気がします。

私が鈴木さんと初めてお会いしたのが、2014年の1月。仕事で使うワークデスクをオーダーで作っていただいたのがきっかけでした。その後、年に1回ぐらいのペースで、飛騨高山の工房にお伺いしていました。

今回初めて、鈴木さんの家具造りに対する想いをお伺いしました。私という使う側の人間と鈴木さんという造り手の「一生モノ」に対する感じ方の違いに、とても驚きました。こんな思いで作ってもらっていたんだ!と。

現在、鈴木さんとコラボさせていただき「一生モノのデスク」を制作中です!
デザイナーとして、長時間デスクに向かっている私が、本当に欲しい!一生使いたい!そんな造り手も使う側もこだわり抜いたデスクにしたいと思ってます。制作秘話も近日公開予定です。ご期待ください!


今後も一生モノでは、様々な方の一生モノをお伺いしていこうと思います。
よろしくお願いします。