Mar.31.2022
/ 一生モノ
アメリカ音楽の豊かさを体験できるビッグイベント!ニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテージ・フェスティバル

ヒットチャートからだけではわからないアメリカ音楽の奥深さ。それが体験できるのが、アメリカ南部のルイジアナ州で毎年開かれるニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテージ・フェスティバルです。演奏されるのはジャズに限らず、アメリカ音楽全般で、日本ではなかなか目にすることのできないアーティストのライブ演奏も見ることができます。今回はポピュラー音楽好きなら一生に一回は見て、聴いて、体験して欲しいこのフェスを紹介します。

アメリカ南部の代表都市・ニューオーリンズ
大河ミシシッピの河口に位置するニューオーリンズ。ここは19世紀初頭にアメリカに売却されるまで、フランスやスペイン領でした。そのため、ここはアメリカの中でもフランス文化やクレオール(フランス人やスペイン人と他の人種の混血)文化の影響が残り、食文化なども独自に発達してきました。「マルティグラ」と呼ばれるカーニバルは有名ですね。また、19世紀には綿花の集積地となったことから黒人人口も多く、それが20世紀に入り豊かな大衆音楽を生み出していきました。ジャズの発祥の地も、このニューオーリンズです。また、R&B、ファンク、ブルース、セカンドラインといった黒人系の音楽以外にも、フランス系移民によるケイジャンや、クレオール系黒人によるザディコといった音楽も盛んになりました。

日本のGW期間中に開催される音楽フェス
このニューオーリンズで開催される全米最大級の音楽フェスが、ニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテージ・フェスティバルです(以下単に「ジャズフェス」)。町の北3kmにあるフェアグラウンズ競馬場が会場となり10を超えるステージで、さまざまなジャンルの音楽の演奏が行われます。また会場ではニューオーリンズを始めとする南部料理の出店や、アートショップ、実演コーナーも設けられ、会場内をニューオーリンズスタイルのブラスバンドがパレードするなど楽しい空間になっています。

ジャズフェスの開催期間は、4月の最終金〜日曜と、5月の最初の木〜日曜の合計7日間。ちょうど日本のGW期間にあたるので、休みを利用して遊びに行く日本人も少なくありません。開催時間は昼の11時から夕方19時というデイフェスで、治安の心配も不要。客層もファミリーから年配客までと幅広く、むしろ他よりも若者の比率が少ないフェスかもしれません。
「ジャズ」と名前が付いていますが、その年のヘッドライナーとなる出演者は、ロック・ポップス系のビッグネームが多いですね。たとえば、2015年はエルトン・ジョン、エド・シーラン、ザ・フー、トニー・ベネット&レディー・ガガ、2016年はレット・ホット・チリ・ペッパーズ、ニール・ヤング、べック、パール・ジャム、2017年はスティービー・ワンダー、トム・ペティ&ハートブレイカーズ、マルーン5、2018年はエアロスミス、ロッド・スチュワート、スティングなどが出演しました。
いま、行かないと見れなくなるという想い
私がこのジャズフェスに初めて行ったのは2016年のこと。それよりずっと前から行きたいと思っていたのですが、なかなか休みを取る決意がつかないでいたのです。しかし、2016年の1月に私の好きなアーティストのデヴィッド・ボウイ、モーリス・ホワイト(EW&F)、グレン・フライ(イーグルス)らが次々と亡くなったことがきっかけになりました。好きなアーティストは見れる時に見ておかないと、一生その機会を失ってしまうかもしれないと。
2月に出演者のラインナップが発表され、その中に未だ来日したことがないアイルランドの孤高のシンガー、ヴァン・モリスンの名前を見つけたときに。私はフェス行きを決めました。モリスンはそのとき70歳。彼はもちろん私にとって、一生に一度は見ておきたいアーティストだったのです。

いざ、ニューオーリンズへ
この旅につきあってくれる友人を見つけ、3月に入り飛行機やホテルの手配が始まりました。フェスのチケットはネットで購入。日本のGWとちょうど重なるため、航空運賃も高めでしたが仕方ありません。また、ニューオーリンズのホテル代も期間中は値上がるため、少し離れたモーテルも利用するなど、節約の工夫もしました。
会場となる競馬場は、ニューオーリンズ名物のトラム(路面電車)の終点から徒歩約10分。会場にはざっくりとジャンル分けされた10ほどのステージがあります。一番大きなAcura Stageには夕方からはメインアクトが登場します。次に大きなGentilly Stageは会場の反対側にあり、こちらはメインに準じるアーティストが出演します。3番目に大きなCongo Stageはブラックミュージックが中心でファンク、ヒップホップ、R&B系のアーティストが出演。あとはジャズ、ブルース、ゴスペルなどジャンル分けされたテントのほか、ケイジャンやザディコ、ニューオーリンズ・ジャズ、ニューオーリンズ・ブラスバンドなどの小さなステージがあります。音に誘われるままに、日本ではあまり聴くチャンスのないタイプの音楽を聞いて回るのはとても楽しいものです。ゴスペル音楽ばかりのステージがあるというのも、ニューオーリンズらしいですよね。

目的は達成、そして翌年もニューオーリンズへ
2016年、私のお目当であるヴァン・モリスンは、2番目に大きなGentilly Stageでの出演でした(同じ時間のメインステージはパール・ジャム)。MCはほとんどなく、19曲立て続けの70、80分ほどの怒涛のパフォーマンスに圧倒されました。演奏中、上空を飛ぶ軽飛行機がその2週間ほど前に亡くなったプリンスの文字を描いていたのも印象的でした。

2017年のジャズフェスは、結成40周年記念ツアー中のベテランロックバンド、トム・ベティ&ハートブレイカーズをどうしても見たく、なんとか時間をやりくりして行きました。ペティが亡くなったのはその半年後。なので、思い切って行って本当に良かったと思います。生でライブを見る機会を、永久に失わずにすんだのですから。

ライブ以外にも楽しみがある
このフェスの楽しみのひとつにフード屋台があります。スパイシーなアメリカ南部料理は日本人の口にもよく合いますが、ニューオーリンズはその中心地のひとつ。会場では、ご飯料理のジャンバラヤ、オクラを使ったミックススープのガンボ、バゲットサンドのポーボーイ(ナマズのフライを挟むのがニューオーリンズ風)、そして名物の生ガキのプレートまで食べられ、私は、翌年はそれも楽しみで行ったほどでした。

ライブが終わっても、ニューオーリンズの夜はまだまだ続きます。期間中は、市内のホールやライブハウスでも多くのライブが行われています。また、旧市街にあたるフレンチクオーターで、名物の南部料理を食べるのも楽しみです。食は旅には欠かせない楽しみですよね。ライブバーがずらりと並ぶ歓楽街のバーボンストリートも外せません。24時ぐらいまでなら人も多く、警官も巡回しているので治安も問題ありません。私も毎晩繰り出し、大いに楽しみました。
アメリカのポピュラーミュージック好きにはたまらないこのジャズフェス。私にとっては、まさに一生モノの音楽体験でした。全体の雰囲気も良く、本当に行って良かったと思えるフェスです。海外なので少しハードルは高いかもしれませんが、みなさんもぜひ体験してみてはいかがでしょうか。
[ DATA ]
ニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテージ・フェスティバル
[公式ページ] http://www.nojazzfest.com
[動画] https://www.youtube.com/embed/bNmY9Eyq5y0
※2019年の開催予定は4月26日〜5月5日。ラインナップは2月中旬に発表。タイムテーブルは3月中旬に発表される予定。