Mar.31.2022

/ 一生モノ

白い砂丘の合間に1年に1度現れるラグーン ブラジルのレンソイス国立公園へ

目の前に素晴らしい絶景が広がる。ただしラグーンが現れるのは3か月間の限定だ。

世界を旅していると、忘れられない景色に出会うことがあります。個人的な思い出と合わさり強い印象を残す場合もありますが、なかには誰が見ても素晴らしい景色もあります。今回紹介するのはその後者、ブラジルのレンソイス国立公園です。地平線まで続く白い砂丘。その合間にある青いラグーン。その色のコントラストが生む風景は、私にとって忘れがたいものです。しかし誰にとっても、これを目にすれば、“一生モノ”の絶景になるはずです。

白い砂丘が続くブラジルの絶景

ブラジル北東部、大西洋の海岸近くにある小さな町バヘリーニャス。その郊外に広がる大砂丘がレンソイス・マラニャンセス国立公園(以下「レンソイス」)です。この大砂丘を多くの人が「死ぬまでに見たい絶景」にあげる理由は、そのまばゆいばかりの白さでしょう。ふつう砂漠の砂丘は茶色ですが、ここにある砂丘は真っ白。なぜかというと、砂粒がすべて石英からできているからです。強風が吹くこの地域では、川によって流されてきた土砂のうち軽い部分が吹き飛ばされ、その後に重い石英の粒だけが残ったのです。

砂丘は一年中見られますが、砂丘の合間にできる水溜りのラグーンはほぼ7〜9月の間しか見られません。このラグーンは雨季に降った雨が砂丘に浸透し、地表に湧き出てきたのです。ただし雨季が終わると干上がってしまうので、見られるのは3か月ほどの間。それが見たいがために、私はこの期間にツアーが発着する町バヘリーニャスを目指しました。

サンセットもすばらしい絶景。刻一刻と変わる色と影に目を奪われる

ツアーに参加し、憧れの大砂丘へ

現地発ツアーは何種類かあり、私はそのうちの3つに参加しましたが、一番のオススメは人気の「大レンソイス・サンセットツアー」です。このツアーは午後2時過ぎに町を四輪駆動のトラックに乗って出発。砂丘に3時半ごろに到着し、サンセットを見た後、7時半ごろに町に戻るという内容です。3つのツアーのうち一番遠くまで視界が開け、砂丘を見渡せるのがこのツアーでした。

私が訪れたのは8月上旬。ちょうど砂丘のあちこちにラグーンができており、私を含めツアー客は服の下に水着を着て来ていました。到着した駐車場の目の前には大きな砂丘が壁のようにそびえており、まだ景色は見えません。公園内の砂丘は自然保護から土足禁止なので、車の中に靴を脱いで砂丘に登ります。裸足で砂の上は熱いかなと思いましたが、白い砂は反射率が高いのでほとんど暑さは感じませんでした。

ラグーンの水はプールぐらいの冷たさだが、日向が暑いのでちょうど気持ちいい。

絶景を目で楽しみ、ラグーンの水に浸かる

砂丘の上に立つと視界が開け、想像以上の素晴らしい絶景が目の前に広がっていました。真っ白な砂丘が、文字通り地平線の向こうまで続いています。この景色に観光客たちが歓声をあげました。白い砂丘の谷間に青いラグーンも見えます。写真でもすばらしいと思っていましたが、目の前のスケール感はそれ以上です。

砂丘を降りていき、グループごとに別々のラグーンに案内されます。水温はあまり高くはありませんが、砂の上は照り返しが暑いので、中に入ると気持ちがいいくらい。水の透明度は抜群です。水深も大人が立って胸あたりとちょうどいい深さです。ここから自由時間になり、周囲を散歩するもの、高台に上がって景色を見るものなど、日没まで思い思いの時間を過ごしました。

砂丘に沈むサンセットを堪能

5時を回ったころ、ガイドが声をかけてきて、サンセットポイントに移動しました。他のツアー旅行者たちも“展望台”と呼ばれる砂丘の上に集まってきます。刻一刻と夕日が砂丘を染めていき、空の色を変えていきます。みな、目の前の風景に心を奪われ、言葉少なになっていきました。やがて太陽が地平線にふれると、急に周囲の彩度が落ちていきます。太陽が姿を消しました。するとみな魔法が解けたように口を開いて話し出し、そしておもむろに砂丘を降り始めました。私もその絶景を心に焼き付け、帰路につきました。

30年近く世界各地を旅し、素晴らしい景色をたくさん見ている私ですが、それでもこのレンソイス国立公園は自分にまだまだ見ていない絶景があることを教えてくれます。地球の反対側にあるブラジルなので、気軽に行くというわけには行かないでしょう。しかし、もし行くチャンスがあったら、迷わず行ってみてください。そこには“一生モノ”の、絶景中の絶景があるのですから。

[ DATA ]

アクセス:
基点となる町は、マラニョン州の州都サン・ルイス。ここまではサンパウロやリオ・デジャネイロなどブラジル各都市からの飛行機を利用。サン・ルイスからツアーが発着する町バヘリーニャスまでは、車やバスで約5時間。便利なのはホテルでピックアップしてくれるツーリストバスで、これは宿泊ホテルで申し込むことができる。

ツアー:
個人で国立公園を訪れることはできないので、砂丘へはツアーで行くことになります。いくつもの現地旅行会社がありますが、ツアーの内容はほぼ同じ。おすすめは紹介した「大レンソイス・サンセットツアー」。砂丘には日陰がなく、照りかえしも強いので、サングラス、日焼け止め、帽子、長袖シャツ、砂から荷物を守る袋などは必携。砂が入るのでカメラは防水カメラが便利でしょう。