
2026.04.21
【2026年版】ブランディングとは?中小企業の経営者が知るべき基礎知識と、ホームページ制作で成果を出す実践ガイド
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ブランディング
2026.05.26
ブランディング

近年、日本では事業会社を子会社に持ち、グループ全体の経営管理に特化する「持株会社(ホールディングス)」への移行が加速しています。東証プライム上場企業を対象にした調査では、ホールディングス体制を採用している企業は年々増加しており、もはや大企業における一般的な経営形態となっています。
こうした状況の中、「ホールディングスサイト(グループサイト)」の重要性が増しています。ホールディングスサイトとは、持株会社が運営するコーポレートサイトのことで、グループ全体の顔として機能するWebサイトです。投資家・株主向けのIR情報を核としながら、グループのビジョン・事業内容・サステナビリティ・採用情報など、多岐にわたる情報をステークホルダーへ向けて発信する役割を担います。
しかし、実際にホールディングスサイトの制作に取り組んでみると、「事業会社のコーポレートサイトとどう違うのか」「どんなコンテンツが必要なのか」「デザインの方向性はどう決めればいいのか」と悩む担当者も少なくありません。
このコラムでは、国内大手9社のホールディングスサイトを実際に分析し、そこから見えてきたコンテンツ設計の共通法則・デザインアプローチ・ドメイン設計の考え方を整理します。制作前に押さえておきたい実践的な知見として、ぜひ参考にしてください。
制作に入る前に、まずホールディングスサイトの定義と役割を整理しておきましょう。
事業会社のコーポレートサイトは、自社の製品・サービスを中心に、顧客や取引先に情報を伝えることが主な目的です。一方、ホールディングスサイトは事業そのものよりも「グループ全体の経営戦略・理念・価値観」を発信することが中心となります。
顧客よりも、投資家・アナリスト・メディア・採用候補者といったステークホルダーがメインの訪問者になる点も、大きな違いのひとつです。
ホールディングスサイトを訪れる人の目的
| ステークホルダー | 求める情報 |
|---|---|
| 投資家・株主 | 決算情報、経営戦略、IR資料 |
| 就職活動中の学生・転職者 | グループビジョン、社風、採用情報 |
| 取引先・パートナー企業 | グループの事業領域、グループ会社一覧 |
| メディア・報道関係者 | ニュースリリース、会社概要 |
| ESG評価機関 | サステナビリティ情報、非財務データ |
こうした多様なステークホルダーが一つのサイトを訪れるため、ホールディングスサイトには「誰もが目的の情報に素早くたどり着ける」情報設計が求められます。
今回は、食品・広告・製造・流通・金融・通信など異なる業種の国内大手9社のホールディングスサイトを分析しました。各社のアプローチの特徴をご紹介します。

「健康にアイデアを」というグループスローガンを軸に、サイト全体を一貫したブランディングで統一しているのが明治ホールディングスの特徴です。食品事業(株式会社明治)と医薬品事業(Meiji Seikaファルマ)という異なる事業ドメインを持ちながら、「健康価値の提供」というひとつのテーマで束ねることで、グループ全体の存在意義を明確に伝えています。
「MOOOOOOORE SUSTAINABILITY」を旗印に掲げたサステナビリティコンテンツも充実しており、カカオの持続的調達や酪農の未来など、事業と直結した具体的な取り組みをストーリー形式で発信しています。グローバル展開を意識した英語サイトも整備されており、海外の投資家や消費者へのリーチも意識した設計です。
参考ポイント: 複数の事業ドメインを一つのコンセプト(健康)で束ねるブランディング手法。

国内外に約680社の企業集団を抱える電通グループのサイトは、グローバル規模感の表現とCEOメッセージの打ち出しに注力した構成が特徴的です。トップページでは最新のIR資料と並んでグローバルCEOメッセージを大きく配置し、経営トップの言葉でグループの方向性を明確に発信しています。
IRセクションはCEOメッセージ・CFOメッセージ・中期経営計画・決算説明会と体系的に整理されており、機関投資家が求める情報をワンストップで取得できる設計になっています。また、アニュアルレポートとサステナビリティレポートを統合した統合報告書の開示も積極的に行っており、非財務情報の透明性にも力を入れています。
参考ポイント: 経営トップのメッセージを起点にサイト全体の信頼性と方向性を伝える構成。

「holdings.panasonic」という独自ドメインを使用し、一目でホールディングス専用サイトとわかるドメイン設計が目を引くパナソニック。事業内容・IR・サステナビリティ・採用と主要コンテンツを網羅しながら、特にサステナビリティ情報の充実度が際立っています。
「Panasonic GREEN IMPACT」と名付けた環境への取り組みを独立したコンテンツとして展開し、脱炭素・資源循環・サーキュラーエコノミーといったテーマを体系的に整理。TCFDへの対応やマテリアリティの特定など、ESG評価機関が重視する情報も詳細に開示しています。また、持株会社と6つの事業会社という「事業会社制」の構造を視覚的にわかりやすく説明しているグループ会社ページも参考になります。
参考ポイント: 独自ドメインの活用と、サステナビリティ情報の体系的・詳細な開示。

コンビニエンスストア・スーパー・百貨店・金融など、多種多様なブランドを抱えるセブン&アイのサイトで特筆すべきは、グループブランドのナビゲーション設計です。「信頼される誠実な企業でありたい」というコーポレートメッセージをトップに掲げながら、各グループブランドへの導線を明確に整理しています。
7-Eleven Japan・イトーヨーカドー・ヨークベニマルといった多数のブランドが混在する中でも、ユーザーが迷わず目的の会社やサービスにたどり着けるナビゲーション設計は、多事業展開グループのサイト設計の参考として特に価値があります。IR情報も充実しており、個人投資家向けのわかりやすい解説コンテンツも用意されています。
参考ポイント: 多数のグループブランドを整理する、直感的なナビゲーション設計。

国内連結営業収益が10兆円に迫るアジア最大規模の小売企業グループであるイオンのサイトは、サステナビリティ情報の充実が際立ちます。1991年から続く植樹活動をはじめ、脱炭素ビジョン・プラスチック削減・食品廃棄物削減など、長年の環境活動の積み重ねが豊富なコンテンツとして蓄積されています。
「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する」という基本理念に基づき、消費者・地域・環境をつなぐコンテンツ設計が特徴的です。IR情報も充実しており、個人投資家向けに「イオンってどんな会社?」というわかりやすい解説ページも用意されています。
参考ポイント: 長期的なCSR活動の積み重ねをコンテンツ資産として活かす姿勢。

「情報革命で人々の幸せに貢献する」というビジョンを前面に打ち出し、戦略的投資持株会社としての独自のポジションを明確に伝えているのがソフトバンクグループの特徴です。ソフトバンク・ビジョン・ファンドをはじめとする投資ポートフォリオの見せ方が洗練されており、世界各国の投資先企業を視覚的にわかりやすく紹介しています。
「新30年ビジョン」という長期経営構想を掲げ、100年単位の未来を見据えた戦略を発信する姿勢は、グループの個性として強く印象に残ります。独自ドメイン「.softbank」の使用もブランド認知の観点から効果的です。投資先企業のリストや事業セグメントの解説は、投資会社型ホールディングスのIRサイトとして参考になります。
参考ポイント: ビジョン・投資戦略を前面に出した、投資持株会社ならではのコンテンツ設計。

「CSV(Creating Shared Value:社会と共有できる価値の創造)」を経営の中心に据え、サステナビリティと事業成長を一体として発信しているキリンホールディングス。IRページ内にサステナビリティ情報を統合し、財務情報と非財務情報を投資家に一括で提供する設計が特徴的です。
「CSVパーパス」を軸に健康・環境・コミュニティの3つの分野でコミットメントを設定し、具体的な数値目標と進捗を開示する姿勢は、ESG投資家からの評価を意識したものと言えます。ビールや清涼飲料水など消費者に身近な製品を持つグループらしく、生活者視点のコンテンツも取り入れたバランスのよい構成です。
参考ポイント: IRとサステナビリティを統合した「CSV経営」の一体的な情報発信。

日本最大の金融グループとして、信頼感と格調を重視した設計が際立つ三菱UFJフィナンシャル・グループのサイト。銀行・信託・証券・アセットマネジメント・コンシューマーファイナンスと多様な金融サービスを持つ「グループ総合力」を強みとして前面に打ち出し、各グループ会社の役割を明確に説明しています。
個人投資家向けに「MUFGってどんな会社?」というわかりやすい解説ページを設け、IR情報への敷居を下げる工夫も目立ちます。コーポレートガバナンス情報も詳細に開示されており、機関投資家が重視するガバナンス体制・役員報酬・リスク管理などの情報を体系的に整理している点は、金融系ホールディングスの手本となる設計です。
参考ポイント: 個人投資家と機関投資家、双方のニーズに応える二層構造のIR設計。

通信設備工事を中心とするインフラ系エンジニアリング企業グループであるコムシスホールディングスのサイトは、シンプルな構成の中にグループ会社へのハブ機能を明確に実装している点が特徴的です。コムシスホールディングス・日本コムシス・サンワコムシスエンジニアリング・コムシス情報システムという主要グループ会社を常に画面上部に表示し、どのページからでも各社のサイトへすぐにアクセスできる設計は実用的です。
装飾を抑えたシンプルなデザインは、エンジニアリング会社らしい実直な印象を与えます。規模の大きな企業と比較して過剰な演出を持たず、必要な情報に集中した設計は、中堅規模のホールディングスのサイト制作においてリアリティのある参考事例と言えるでしょう。
参考ポイント: グループ会社間の回遊性を最優先にした、シンプルで実用的なナビゲーション設計。
9社のサイトを横断的に分析すると、ホールディングスサイトに共通する5つのコンテンツ領域が浮かび上がります。
9社すべてに共通する最重要コンテンツが、グループ全体のビジョン・理念・パーパスの発信です。「健康にアイデアを」(明治)、「情報革命で人々の幸せに貢献」(ソフトバンクグループ)、「CSV経営」(キリン)のように、事業の枠を超えたグループ全体の存在意義を言語化し、サイトのトーンを規定しています。
ホールディングスサイトはどうしても情報量が多くなりがちです。ビジョン・理念をサイト全体の軸として設定することで、情報の優先順位を整理し、訪問者にとってわかりやすいサイトに仕上がります。制作前に「このグループは何のために存在するのか」を言語化しておくことが出発点です。
上場企業のホールディングスサイトにとってIR情報は最も重要なコンテンツのひとつです。決算報告・株価情報・中期経営計画・有価証券報告書・統合報告書など、投資家が必要とする情報を体系的に整理する必要があります。
9社の中でも特に電通グループ・三菱UFJフィナンシャル・グループはIR情報の充実度が際立っていました。機関投資家向けのアニュアルレポートに加えて、個人投資家向けのわかりやすい解説コンテンツを設けている点も参考になります。IR情報はPDFでの提供が多くなりがちですが、Webページとして見やすく整理することが、投資家との良好なコミュニケーションにつながります。
近年、急速に重要性が高まっているコンテンツがサステナビリティ・ESG情報です。9社のうちパナソニックHD・明治HD・キリンHD・イオンは特にこの領域に注力しており、環境・社会・ガバナンスの各テーマを詳細に開示しています。
背景には、機関投資家のESG投資の拡大やTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への対応義務化など、企業が非財務情報の開示を求められる社会的変化があります。単なる義務対応にとどまらず、自社の事業との関連性を明確にしながらサステナビリティへの取り組みを発信することが、企業価値向上につながります。
ホールディングスサイト固有の重要コンテンツが、グループ会社への導線設計です。訪問者の多くは、ホールディングスサイトそのものではなく、その先にある各グループ会社の情報にたどり着きたいと考えています。
セブン&アイのような多数のブランドを持つグループでは、ナビゲーション設計が特に重要です。コムシスHDのように常に主要グループ会社へのリンクを表示する方法から、パナソニックHDのように事業会社制の構造を図解で説明する方法まで、さまざまなアプローチがあります。グループの規模・事業の多様性・ユーザーの利用目的に応じて、最適なナビゲーション設計を検討しましょう。
ホールディングスサイトへの採用情報の集約は、近年急速に広がっているトレンドです。グループ全体の採用情報をホールディングスサイトに集約することで、就職活動中の学生や転職希望者が効率的にグループ全体の採用情報を確認できます。
パナソニックHD・電通グループなどは採用情報をホールディングスサイトの重要コンテンツとして位置づけており、グループで働く魅力・人材育成の方針・各社の採用情報へのリンクを整理しています。特に「グループ全体として人材を確保したい」という戦略を持つ企業にとって、採用コンテンツの充実は優先度の高い取り組みです。
9社のサイトを分析すると、デザイン・UXの方向性は大きく3つのアプローチに分類できます。自社の業種・訴求したいターゲット・グループのイメージに合わせて、どのアプローチをベースにするかを決めることが重要です。
グループ全体の世界観・メッセージをトップページで力強く表現し、訪問者の印象に残ることを重視したアプローチ。大きなビジュアルやキャッチコピーで感情に訴えかけ、「このグループはどんな価値観を持っているか」を直感的に伝えます。
明治ホールディングスや電通グループが代表例で、サイトを開いた瞬間にグループのビジョンが伝わる設計になっています。消費者向けブランドを持つグループや、クリエイティブ・イメージ訴求が企業価値に影響する業種に向いています。
向いている企業: 食品・飲料・広告・エンタメ・消費財メーカー系のホールディングス
多様なステークホルダーが必要な情報に迷わずたどり着けることを最優先にした、機能性重視のアプローチ。ナビゲーションが明確で、IR情報・グループ会社情報・サステナビリティ情報などが体系的に整理されています。
セブン&アイ・ホールディングスや三菱UFJフィナンシャル・グループが代表例で、利用目的の異なる多様な訪問者にとって使いやすい設計です。グループ会社の数が多い、または投資家向け情報の充実を重視する場合に有効です。
向いている企業: 流通・金融・インフラ・多角化経営の大規模ホールディングス
日本語・英語の切り替えや、グローバルな投資家・パートナーへの情報提供を重視したアプローチ。サイト構成・ビジュアル・コピーライティングすべてに国際的な視点が取り入れられています。
パナソニックHD・ソフトバンクグループなどが代表例で、グローバルな事業展開を行う企業やADR(米国預託証券)を発行している企業に特に有効です。
向いている企業: 海外売上比率が高い、または海外投資家からの評価向上を目指すホールディングス
ホールディングスサイトのドメイン設計には、大きく分けて「ドメイン完全分離型」「ドメイン一部分離型」「ドメイン一体型」の3種類があります。東証プライム上場企業を対象にした調査(2025年8月)によると、ホールディングスサイトと事業会社サイトのドメインを完全に分離する「ドメイン完全分離型」が全体の8割超を占めており、最も主流の構成です。
| 構成タイプ | 割合 | 特徴 |
|---|---|---|
| ドメイン完全分離型 | 85.1% | HDサイトと事業会社サイトが完全に別ドメイン |
| ドメイン一部分離型 | 8.3% | 一部の事業会社のみ別ドメイン |
| ドメイン一体型 | 6.6% | 事業会社のサイトもHDサイトのドメイン内に内包 |
ドメイン完全分離型のメリットは、ホールディングスサイト独自のブランディング・運用が自由にできる点です。一方、ドメインやSSLの維持費が別途発生する点、HDサイトと事業会社サイト間でコンテンツが重複しやすい点はデメリットとして挙げられます。
今回取り上げた9社のドメイン選択を見ると、.co.jpと.comが主流でありながら、パナソニックHDの「holdings.panasonic」やソフトバンクグループの「group.softbank」のように、企業名を含む独自ドメインを活用する事例も見られます。
独自ドメインはブランド認知の観点から効果的ですが、取得・維持コストが発生します。一方、.co.jpは日本法人であることの信頼感を持ち、多くの企業が利用しているため馴染みやすいドメインです。自社のブランド戦略とコストバランスを踏まえて判断しましょう。
ドメインを分離した場合に避けられないのが、グループ会社間の回遊性の課題です。ユーザーがホールディングスサイトを起点に各事業会社のサイトへスムーズに移動できるよう、以下のような工夫が有効です。
9社の事例分析をもとに、ホールディングスサイトの制作前に必ず考えておきたい3つの問いを整理します。
ホールディングスサイトが向き合うステークホルダーは多様です。投資家を最優先にするのか、採用強化に注力するのか、グループ全体のブランディングを重視するのか。すべてをバランスよく対応しようとすると、逆に「誰にも刺さらないサイト」になるリスクがあります。
「主たるターゲット」を設定した上で、そのターゲットが求める情報を最優先に設計することが重要です。例えば投資家を主たるターゲットとするなら、トップページからIR情報へのアクセスを最短にし、決算情報や中期経営計画を前面に配置する設計が適しています。
9社の事例から明らかなように、強いホールディングスサイトには必ず「グループ全体の存在意義を一言で表すコンセプト」があります。「健康にアイデアを」「情報革命で人々の幸せに貢献する」「CSV経営」——これらはいずれも、グループの事業・人材・サステナビリティをひとつの言葉で束ねる役割を果たしています。
サイト制作の前に、自社グループのビジョン・パーパスを言語化する作業に十分な時間を投資してください。このコンセプトが明確でないまま制作を進めると、コンテンツがバラバラな印象を与えるサイトになりがちです。
ホールディングスサイトと事業会社サイトの間でコンテンツが重複することは、よくある課題のひとつです。たとえば「採用情報」はどちらに掲載するか、「サステナビリティ情報」の詳細はどちらが担当するか、「ニュースリリース」はそれぞれ独自に発信するかHDサイトに集約するか——これらを事前に決めておくことが重要です。
コンテンツの重複はSEOの観点からも望ましくなく、管理コストの増大にもつながります。制作前に事業会社の担当者も交えてコンテンツマップを作成し、「HDサイトが担う情報」と「事業会社サイトが担う情報」を明確に役割分担しましょう。
最後に、本コラムの内容を凝縮した制作前チェックリストをご活用ください。
ホールディングスサイトの制作は、単なるWebサイト制作以上に、「グループ全体の経営理念・情報戦略・ブランディング」を整理する機会でもあります。このコラムがその出発点として、少しでもお役に立てれば幸いです。