Branding Blog
サステナビリティ
Webブランディングとサステナビリティ】その2
2024.12.24
20世紀の企業ブランディング(企業価値創造)は、ロゴの刷新やコーポレートスローガン(タグライン)の策定、ミッションの定義など、企業改革の姿勢を世に示すことがメインでしたが、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDSs)の後継として2015年に国連サミットで採択された持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)により、「サステナビリティ(持続可能性)」が重要なキーワードになりました。
21世紀の企業経営に求められる「地球・社会の持続可能な開発」への貢献と、「企業の持続的成長」の2軸の視点が、企業評価の大きなものさしとなっていく今、サステナビリティに関するキーワードを理解することが企業ブランディングの近道となります。
【サスティナビリティキーワード解説】:トランジションデザイン
私たちは今、地球の「移行期(transition)」に立っていると考えることから始める
持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)が2015年に採択されてから、世界的規模で、官民を挙げて、「サステナブルな未来の構築」に邁進していますが、たとえば「気候変動」一つとっても、あまりに巨大で複雑なスケールの問題なので、社会、経済、文化などそれぞれの視点から見ると、どう問題を解決していくのか、真剣に考えるほど立ちすくんでしまう現実があります。
そこで、問題解決を一歩ずつ進めていくために提示された考え方が「トランジション(transition)」です。トランジションとは「移行・変化・過度」という意味を持ち、ある段階から次の段階へと移行する時期(時間)を指します。
たとえば、現在問題になっている「化石燃料から再生可能エネルギーへの転換」も、現時点をトランジション(移行期)と捉えれば、さらに前に向かって確実に転換していく具体的な取り組みとプロセスを提示することが可能です。同じように、「中央集権から分散へ」「ゼロ・サムからバランス型社会へ」「線形から循環型経済へ」などもトランジションにあると捉えることができるでしょう。
上記のような大きな社会変革を前進させていくことを目指す、次世代のデザインアプローチとして注目される「トランジションデザイン」は、デザイン研究を行うカーネギーメロン大学(CMU)デザイン学部のグループが2012年に提唱したもので、「地球規模の巨大な問題に対して、社会規模の価値観の移行をデザインする、新たなデザインの実践・研究」と定義されています。
「デザイン」には、デザインを構成する配色やレイアウトなど、ルールや方程式のような「理論」が必ずありますが、現代のデザインはプロダクトやコミュニケーションという範疇を越えて、体験、サービス、ソーシャルイノベーションなど社会性を含んだものへと変容し、政策・文化、さらにESG(環境・社会・ガバナンス)というレベルにまで拡張されています。
そういう意味でトランジションデザインは、気候変動や生物多様性、資源枯渇、パンデミック、格差の広がりなど、多様な要因が複雑に絡み合った地球規模の問題を、長期的な未来ビジョンに立ち、デザインを主導とした社会移行を提案する考え方で、企業に置き換えれば、事業創出を通じて大きな社会変革を促すことを目指すものです。
直線的で単一的な手法では解決できない複雑性が高い上記のような課題は、持続可能な開発目標(SDGs)で焦点が当てられている問題とも見事に一致します。最新のデザインアプローチであるトランジションデザインは、科学や哲学、心理学、社会科学、人類学などデザイン以外の知識・アイデア・スキルなどの情報を活用しながら、長期に渡って存続する解決法を提示することがその役割です。
【サスティナビリティキーワード解説】:ESG(環境・社会・ガバナンス)
ESGが企業評価をはかる重要なものさしとして機能していく新しい時代へ
日本経済をリードする大手上場企業を中心に、コーポレート(企業)サイトの充実が進んでいます。特にESG(環境・社会・ガバナンス)の基礎的なコンテンツに加えて、企業戦略や独自の取り組みなどの開示も顕著で、コーポレートサイトの刷新にあたっては、トップメッセージよりも統合報告書やサステナビリティリポートに力を入れている企業まで散見されます。また、サステナビリティ経営に関して、株主、社員、取引先、地域などのステークホルダー向けに、コーポレートサイトに新たにサステナビリティサイトを開設する企業も増えています。
ESGとは、Environment(環境)・Social(社会)・Governance(ガバナンス)の頭文字を合わせた言葉で、企業が長期的に成長するための経営に不可欠な観点であり、企業を取り巻くステークホルダーの要請に応えるための重要な切り口です。
企業はこれまで経済的成長による株主への還元が最重要課題とされてきましたが、2006年の国連責任投資原則(PRI)の提唱を機に、ESGやESG投資に社会の注目が集まりました。日本では年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2015年にPRIに署名し、2017年にESG投資を始めることを明言したことから広がりをみせるようになります。
以降、企業活動を通じた環境問題や社会課題の解決に積極的に取り組んで、ステークホルダーへの責任を果たすことが企業の責任となり、ESG経営によって、新たな持続的成長の軸となるビジネスチャンスを創出しようとしています。
そのような持続可能で豊かな社会の実現を目指すESGは、「環境」では二酸化炭素の排出量の削減や水質汚染の改善、「社会」では自生の社会進出による男女平等の環境づくりや労働条件の改正、「ガバナンス」では企業の統治体制の整備や不祥事の予防、リスク回避のための取り組みが挙げられます。
より具体的にいうと、ESG経営は、環境への負荷や無駄を減らすこと、つまり省エネへの取り組みや、再生資源の利用促進など、自社でいかに貢献できるかから始まります。さらに、労働環境を改善して、働きやすい環境をつくる、LGBTやマイノリティに対する配慮を含む多様性を許容できる環境をつくる、さらに、情報開示ができる体制を構築し、人的リソースの確保なども必要で、サステナビリティ情報を開示することによって企業イメージがアップし、求人の効果も見込めます。
2022年12月に金融庁が公表した「ESG評価・データ提供機関に係る行動規範」は、ESG評価を提供する企業が、サービスの質と透明性を総合的に向上するための具体的な原則とガイドラインが提示されています。
2023年度から、すべての上場企業は有価証券報告書での「サステナビリティ情報開示」義務化が始まります。企業が長期的な視点で直面する課題やリスクに対する自社の対応を示すサステナビリティ情報開示は、コーポレートサイトでより重要な役割を果たすようになっていきます。