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サステナビリティ

サステナビリティとは(e-フューエル・国境炭素調整)

2025.03.26

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サステナビリティキーワード解説:e-フューエル

燃焼時もクリーンな液体燃料「合成燃料=e-fuel」は、どういう夢を見せてくれるのか

「e-fuel(イーフューエル)」とは、大気中から回収したCO2(二酸化炭素)と再生可能エネルギーによる水の電解から得られたH2(水素)を合成して製造される液体の合成燃料。複数の炭化水素化合物の集合体であることから“人工的な原油”とも称されます。

一時期、トヨタ自動車が「水素エンジン」を搭載した24時間耐久レースのテレビCMをオンエアしていましたが、前トヨタ自動車社長の豊田章男氏は日本自動車工業会の会見で、e-fuelについて、「目的は電動化ではなく、カーボンニュートラルだ」と言及。世界の大手自動車メーカーが電動化に舵を切る中で、日本の複合技術(エンジン+モーター)にカーボンニュートラル燃料を組み合わせれば、大幅なCO2削減になると主張しています。

日本は、2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス実質排出ゼロ)実現に向けて、2020年末に「グリーン成長戦略」を策定。自動車の電動化に関しては、2021年1月18日に菅義偉前総理が施政方針演説で、「2035年までに新車販売をすべて電動車(電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)、ハイブリッド車(HV)など)にする」と宣言しています。

経済産業省は、乗用車は2035年に電動車100%普及、商用車は小型車・新車は2030年までに20~30%、2040年までに電動車、脱炭素車100%、大型車は2020年代に5000台を先行導入し、2030年までに2040年の電動車普及目標を設定することを目指しています。

電動車の普及は非常に身近な問題ですが、電動車に対応した急速充電器などインフラの整備、家庭での充電設備の拡大、バッテリーを満たすために必要な電力の確保、リチウムイオン電池のコスト上昇に伴う車体価格の高騰など、様々な問題が山積。2035年までに新車をすべて電動車にするという目標がありますが、2040年のガソリン車の割合は全体の84%を占めるという予想もあります。

合成燃料e-fuelは、原油に比べて硫黄分や重金属分が少ないという特徴があり、燃焼時にもガソリンや軽油より環境負荷が低いとされています。また、既存のガソリン車にも無改造で使えるというメリットがあり、ポルシェやマツダなど複数の大手自動車メーカーが開発に取り組んでいます。

e-fuelは、再生可能な生物資源(バイオマス)を原料とし、カーボンニュートラルな燃料としてすでに商用化されている「バイオ燃料」とは違い、原料がCO2とH2なので、工業的に生産できるメリットがあります。 また、e-fuelは、水素ガスなどのガス燃料や電池と比較して、同じ体積または重量あたりのエネルギー密度が高く、常温で保存できる液体なので、他の新燃料に比べて長期的な備蓄が可能などのメリットもありますが、経済産業省の試算によると、e-fuelは1リットルあたり300~700円と非常に高価で、原料となるCO2とH2をいかに低コストで調達できるかが大きなカギを握ります。

サステナビリティキーワード解説:国境炭素調整

地球はこのままだと2100年には平均気温が5.8度上昇。地球温暖化問題に「炭素税」?

日本は欧州に比べて再生可能エネルギーの利用が遅れているといれていますが、日本政府は、企業の二酸化炭素(CO2)の排出に課金する「カーボンプライシング(CP)」の本格導入を2028年度とする方針を決めました。企業の負担や経済への影響を考慮して、5年以上の準備期間を設け、対象も絞り、小さな負担からスタートするので、排出削減の効果は不透明です。

カーボンプライシング(CP)では、英仏などはCO2の排出量に課税する「炭素税」をすでに導入し、企業間で排出量を売買する「排出量取引」も欧州連合(EU)は2005年に開始。電力会社にも排出枠購入を義務づけています。それに対して、日本は炭素税の導入を産業界の反対で先送りし、日本政府はCO2排出量に応じて企業から徴収する賦課金方式と、排出量取引の段階的導入の組み合わせでスタートしますが、政府が目標とする2050年に温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現は非常に不透明です。

EUがすでに導入している炭素税は、気候変動問題の主因である炭素に価格をつけて、二酸化炭素の排出を抑制しようという政策で、二酸化炭素を排出する企業や個人などに、二酸化炭素の排出量に見合った金銭的な負担を求めます。

また、EUは国境炭素調整を「30年55%減・50年カーボンニュートラル」の対策群に位置づけていますが、「国境炭素調整」とは、気候変動対策をとる国が、同対策の不十分な国からの輸入品に対し、水際で炭素課金を行うことで、自国からの輸出に対して水際で炭素コスト分の還付を行う場合もあります。 国境炭素調整は2009年のCOP15「コペンハーゲン合意」の交渉で大きな争点となり、インドは「気候変動を理由としたいかなる一方的な国境炭素措置も採用してはならない」と規定することを提案したのに対し、先進国は国境炭素措置に関する国際合意がないなかで、インドの提案を特記することに反対。今後も国境炭素措置の線引きは論議を呼びそうです。

 

Fumiaki Tanabe

CEO

企業の価値を最大化する戦略に特化したブランディングとマーケティングのエキスパート。インフラ関連企業や大手製造メーカーから中小企業に至るまで、幅広い業界でのWebブランディング実績をもつ。

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